はじめに

「家づくり」にあたって大切なことは価値観の合う相手 ( 設計者 ) と出会うことだと思っています。

そこで、私が設計をする上で大切にしている 6 つのことを紹介します。

この大切にしていることに共感しあえる関係が「家づくり」の第一歩になると考えています。

1 .周辺環境に馴染む建築

どんな敷地でも全く同じ条件の敷地はありません。
太陽の上がる角度や周りの景色、高低差や風の流れ、隣家との距離間、 周辺環境のことを読み取りそこに適した建築の姿をじっくり考えます。
家は建ったら建主のものですが、街並みを形成する一つの要素になります。
街並みのお手本になるような、風景に馴染む佇まいを目指しています。

2. 普遍的な価値を目指す – 光・風・温度・湿度・風景 –

設計をする際に大事にしていることは普遍的な価値を取り入れることです。
ここで言う普遍的な価値とは、いつの時代も変わらず人間が心地良いと感じるものについてです。
例えば、木漏れ日の光、自然の風の流れ、快適な温度・湿度、
空や植物の緑が見える風景など、 何百年も前から人間が持ち合わせている
それらを心地良く感じる感覚です。
家の中にいながらそういった普遍的な価値を感じることができる、
または気づかせてくれる家を設計したいと思っています。

3. 時間が経つにつれ魅力が増す素材

家づくりにおいて素材の選定は重要な要素の一つになります。
選ぶ素材はできるだけ自然のものを、時間が経つにつれ経年変化によって味わい深く、
魅力を増してく素材をできるだけ選びたいと思っています。
人間が自分の身体をケアをするように、家もメンテナンスしながら年をとっていけば、
時間が経っても美しく愛着のある家になっていきます。

4 .空間の質を追い求める

家づくりを考える際にまず間取りがよく取り上げられますが、
住まいにおいて重要なのは空間として総合的に捉えることです。
天井の高さ・窓の位置やその先に見える 景色・日差しとそれによって生まれる陰影、
更には細かな素材と素材の取り合い(収まり・ディテール)そういった様々な要素によってその空間にいて気持ちよく感じるかどうかがガラッと変わります。
間取りだけで考えるのではなく、 総合的に空間の質を追い求めて模型や CG などを駆使しながら設計を進めていきます。

5. 汎用的でありながら唯一の建築

家というのは生活のことを考えると、その機能的な部分からある程度汎用的なものに収まっていきます。毎回奇抜なデザインを追い求めることは 建築家のエゴであって建主のことを第一に考えることとは相反します。しかし、敷地に同じものがないようにクライアントも全く同じ条件という ことはありません。それぞれの家族の特性があり、趣向があります。 そんな建主に適した住まいを深く追求していけば必ず唯一の建築が出来上がると考えています。

6. 庭を建築と一体に考える

私は建築と同じぐらい庭や植物は住まいにとって大切なものと考えています。 家に帰ってくるときも、家の中から外を眺めるときも庭に緑があると豊かな気持ちになれるものです。
家の設計をするときには初期段階から室内と同じように、アプローチや庭の計画についても一体的に設計することを心がけています。

さいごに

これらの大切にしていることに共感していただくことが出来れば、良いお付き合いができるはずです。

家づくりは長く根気のいる作業ですが、建主と設計者が同じ方向を見ることが出来れば、その過程も非常に楽しいものになります。

家づくりの過程そのものを楽しい思い出としていただき、完成した家を長く愛していただくことが私の目標です。

そして、完成したあとも長くお付き合いを続けていきたいと思っています。